2025/07/27
トヨタ自動車、トヨタ自動車東日本、茨城トヨペットの3社硬式野球部が参加した「モビリティマッチ2025」が7月19日と20日に茨城県にある常陸大宮市民球場で行われた。通算5回目の開催で、今年はトヨタ自動車東日本が初参戦となった。
大会は2日間の日程で行われ、3チームの総当たり戦で実施された。初日は茨城トヨペットがトヨタ自動車(レッドクルーザーズ)に3-1で勝利。2日目は第1試合でレッドクルーザーズがトヨタ自動車東日本に5-4で競り勝ち、第3試合ではトヨタ自動車東日本が茨城トヨペットを2-1で下したことで、3チームが1勝1敗で並ぶ結果に終わった。
初日の試合では茨城トヨペットの左腕・鈴木重寛(土浦並木店セールスコンサルタント)が5回無失点の快投を演じた。鈴木は昨年のモビリティマッチにも登板。レッドクルーザーズを相手に3回無失点と結果を残していた。「今年打たれたら、去年はまぐれだと思われちゃうので」としてやったりの表情をみせた背番号14は、「来年も?そろそろ怖いですけどね(笑)。でも自信をもっていいのかなと思います」と胸を張っていた。
好投した鈴木重寛投手
大会初日の午後には、子供たちを対象にした野球教室が行われた。県内6つの野球チームから73名が参加。その中には、茨城県内で唯一の女子野球チームである茨城スーパーガールズの少女たちも参加していた。
実は茨城トヨペットと同チームは、練習場の共有や一緒にプロモーションビデオを作成するなど、盛んな交流があるという。野球教室に参加した主将の古垣黎奈(ふるがき・れな)さんは、「いいところを褒めてもらった。基礎的な部分を意識して練習しないといけないという話が聞けて、今後もそういうことを意識していこうかなと思いました」と目を輝かせていた。
茨城スーパーガールズの選手たち
そもそも、どうして大会が開催されることになったのだろうか。「5年前になるんですけど、仲良くさせてもらっているJR水戸さんと地域のために貢献したいねという話になって、電車と車のモビリティマッチということで話題性を作って、社会人野球を知っていただきたいということが始まりでした」
そう話すのは、茨城トヨペット硬式野球部プロデューサーの福地彬さんだ。
野球教室で子どもたちを熱心に指導する福地彬さん
「そこから茨城日産さんとディーラーマッチという形でエンターテインメント性を持たせてやったこともありました。茨城日産さんも来年はまたやりたいと言ってくださっている。いずれ都市対抗、日本選手権、モビリティマッチみたいな、三大お祭りに…。どちらかというとエンタメに振って、地域を盛り上げていければと思っています」
昨年からレッドクルーザーズが参戦。今年はトヨタ自動車東日本を加えた大会に進化した。「私たちからすればトヨタ自動車さんは“神のチーム”。なかなか声をかけさせてもらえなかったけど、メーカーと販売店が交流することによって生まれるものがあると思っていた」
意外にもこれまで硬式野球部のグループ間交流はなかったという。福地さんも「我々は週に2回しか練習できないので、負い目に感じている選手も多かった。でもトヨタ自動車さんに働き方が素晴らしいですねと称賛されることで、選手たちも誇りを持つことができたんです」と成果を強調した。
共通する理念として、社会人野球で地域を盛り上げたいという思いがある。昨今叫ばれる野球人口の減少。NPBが公開したデータを引用すれば、野球人口は2010年から22年にかけて、約60万人減少しているそうだ。
子どもたちにはモビリティマッチの取り組みで、野球の楽しさに触れてほしいという願いがある。野球教室で講師を務めたレッドクルーザーズの増居翔太投手(MS統括部 車両プロジェクト室)が「アマチュアというくくりで小学生とか中学生と野球を気にせず交流できるのは素晴らしいこと。最大限に生かして魅力を伝えていきたいし、僕たち社会野球のポテンシャルももっと上げていくべきだなと思います」と話せば、トヨタ自動車東日本硬式野球部の根来龍真捕手(岩手工場工務部工場管理室人事原価G)も「初心に帰るというわけではないですが、子どもたちと触れ合うことは楽しいし、やっぱり野球って楽しいものだなと元気をもらえる。こういう機会は大切にしていきたい」と力を込めた。
モビリティマッチで力投する増居翔太投手
またレッドクルーザーズで唯一の茨城県出身・細川拓哉投手(サービスパーツ物流部 改善推進室)にとっては、“凱旋試合”になっていた。中日ドラゴンズの主砲として活躍する2歳年上の兄・成也と白球を追いかけた故郷でのイベントということで、「来る道でも懐かしさを感じましたし、ここで試合をできることは嬉しいです」と白い歯をこぼす。
地元凱旋の喜びを語る細川拓哉投手
なにより細川投手自身も、幼少期に社会人野球の選手と交流を持ったことが、野球選手を目指すきっかけになったという。「小学校1年生で野球を始めて、NTT東日本さんの野球教室に行ったことがあった。バックホームの送球や、野球に対する姿勢とか、率直に言うとすごかったという印象が残っている。社会人と一緒にやることの影響力に実感があるので、野球が広まればいいなと思います」
炎天下の球場に響き渡った応援リーダーの扇動に吹奏楽。公式戦さながらも雰囲気に、選手らも身の引き締まる思いでプレーしていたはずだ。「例えば、茨城トヨペットの選手だと500人から1000人のお客様がいる。いずれはお客様でここを埋めてみたいですね」と福地さん。盛夏の風物詩を目指すモビリティマッチの更なる発展に期待したい。
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