2026/06/15
肌で感じたスポーツの熱狂は、その人の勇気となり、活力となる。そして、そのポジティブな気持ちは、周りへと伝播していく。5月31日、国立競技場で行われたキリンチャレンジカップ2026・日本代表対アイスランド代表戦は、4年に一度の聖戦を前にしたSAMURAI BLUEと日本国民だけでなく、ある家族の絆をより強く結ぶ一戦となった。
この日、スタジアムには6万2,212人の大観衆が集結。青く染まったスタンドには、家族や多くの人のサポートを受けながら、その光景に胸を高鳴らせる子どもたちの姿があった。彼らの観戦を後押ししたのが、トヨタ自動車、日本サッカー協会(JFA)、日本障がい者サッカー連盟(JIFF)が手を取り合って進めるFootball & Mobility for ALLというプロジェクトだ。
同プロジェクトは、「移動が、チャレンジするための壁ではなく、夢を叶えるための可能性になってほしい」「サッカーが人々の原動力となり、日本の未来を元気にしたい」。そんな共通の思いを掲げ、移動のストレスからスタジアム観戦に踏み出せずにいた子どもたちとその家族を、日本代表戦へ招待する取り組みだ。2024年の活動開始から回を重ね、今回で6回目。東京都立光明学園の児童生徒とその家族38名が参加し、累計の参加者は250名を超えた。
日本代表対アイスランド代表戦のキックオフ前、子どもたちとその家族は、国立競技場を望むTEPIAイベントホールに集まった。自宅から会場までの送迎を担ったのは、本プロジェクトに参画するトヨタモビリティ東京が提供した福祉車両「ウェルキャブ」。ハイエースやノアなど、それぞれの状況に合わせたさまざまな車種が用意され、家族みんなが移動のストレスを感じることなく会場へとたどり着いた。
会場では「SPORTS!FUN TOGETHER」と題したプログラムが開かれ、元サッカー日本代表で、現在はJIFFの会長を務める北澤豪氏と、電動車いすサッカー選手の永岡真理さんが登壇。サッカーが持つ魅力を語りながら、世界最高峰の舞台を控えた日本代表の選手紹介や見どころ解説で、観戦への期待を高めていった。
北澤氏は、6回目を数えるこの取り組みについて、「サッカーへの情熱や、観戦に行ってみたいという思いを持たれる方が増えてきた。やり続けていることで、周りの常識が少しずつ変わってきた」と、プロジェクトの広がりを実感した。
さらに「これが特別なイベントではなくて、当たり前に受け入れられていってほしい。周りの人たちがサポートしながら、アクセスしやすい環境、(スタジアム観戦が)誰もが行きやすい場所になり、一人でも観戦に行けるようになっていってほしい」と、活動の先に描く未来を語った。
プログラムの中で、電動車いすを巧みに操り、丁寧なパスや細かいドリブルを披露し、会場を沸かせた永岡さんは、「電動車いすサッカーを多くの方に知ってもらえて、とても嬉しかった」とかみしめた。そして、4年に一度の聖戦を前にした“同じサッカーの仲間”である日本代表へ、「世界の舞台に向けて日々練習されていることが十分に発揮できるよう応援していますし、悔いのない戦いをしてもらいたい」とエールを送った。
プログラムを終えた家族は、再びウェルキャブに乗り込み、国立競技場へ。家族そろってのスポーツ観戦は初めてという人も多く、会場の揺れ、響き渡る応援の声、そして熱気に包まれた。参加者の竹村さん(父)は、「子どもがこういう場に行けるのか、アクセスは大丈夫かという不安があって、今までスポーツ観戦に来たことがなかった。次回以降も連れていってあげられたら嬉しい」と笑顔を見せた。ウェルキャブでの移動については、「家族全員が快適に過ごせる空間でした」と振り返った。
小学生の頃に北澤氏へ憧れていたという藤居さん(父)は、「家族の中で一番テンションが上がっていました」と声を弾ませた。子どもとのスポーツ観戦はこれまでハードルが高かったというが、この日は「今までで一番いい笑顔をしていて、すごく嬉しかった。トヨタをはじめ、今回サポートしてくださった方々に感謝したい」と話した。
青く染まったスタンドで、子どもたちは何を見て、何を感じただろう。試合のスコア以上に、家族が肩を並べ、同じ熱狂を分かち合えたこと、その時間こそが何よりの「勝利」だったのかもしれない。
北中米の地へと駆けていくSAMURAI BLUEのように、家族もまた、それぞれの新しい一歩を踏み出した。移動という壁が夢へ向かう可能性に変わるとき、スポーツはもっと多くの人のものになる。「特別なイベント」が「当たり前」になるその日へ。Football & Mobility for ALLが灯した光は、子どもたちから、その家族へ、そして次の誰かへと、確かに伝わっていく。

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